熱狂と酔狂 ディレクターズコラム
もしかして在来種、入れ替わってる?セミの名は。-前編-
会えば絶対、すぐにわかる。外来種巨大昆虫が埼玉を蹂躙。爆音で鳴くセミ、それを捕まえて調べる主人公、野食ハンター茸本朗。お前は、誰だ!? 川口の竹藪で出会った、外来セミと朗、虫喰いネコチャン、あと虫取りのオッサン。それぞれの想いが交錯する昆虫食ファンタジー!(2018年取材)
名前はタケオオツクツク。
子供達に大人気の夏のスター、セミ。でも…お前は誰だ!なんかデカいぞ!竹の樹液を吸いに中国大陸からやってきた巨大セミ・タケオオツクツクは、大きさも鳴き声も規格外にデカい。
ミンミン鳴いても勝てそうにない小ぶりな在来セミ達を守るべく立ち上がったのは、野にいる生物をどんどん食べちゃう“野食ハンター”茸本朗(たけもと あきら)だ。(尚、普段は在来セミも食べている模様)
「デカいってことは食べる部分も多いでしょ?」朗は晩ごはんのおかずを求め、竹藪へと向かった。
ほうきに乗ってやってきたぜ。
外来種・タケオオツクツクは、埼玉県川口市の竹林で大繁殖中だ。集団で海を渡ってきたのか?いや、実は輸入ものの竹箒に卵がついてきているのが発見されており、どうやらそれがきっかけらしい。他県に拡散する可能性もあるという。
日暮れに訪れた竹藪は、風に吹かれさやさやと葉の音が…しない!タケオオツクツクの耳慣れない電気のこぎりみたいな鳴き声が「ジジジジジジ」と襲いかかる。慌てる取材班を尻目に、野食ハンターは冷静に虫取り網を取り出し言った。「届かないっすね」そう、成虫は羽が生えている。どうしましょう。
セミの幼虫が食べたい。
実は今回、朗がおかずの本命として狙っていたのは、羽化するために土から出てきた幼虫だった。成虫になると、羽が生えて殻が硬くなり、全身食べれる幼虫に比べて過食部が減ってしまう。その上、口触りがもしゃもしゃして美味しくない部分がほとんどになってしまう。朗曰く「成虫の美味しい部分は羽を動かす胸の筋肉だけ」なので、羽化する前の個体をなんとか捕らえなくてはいけない。
セミ、そこにいちゃだめだ。朗が来る前に竹藪から逃げるんだ。
しばらく歩き回ると、木の幹の低い位置にとまっている成虫を1匹発見。朗の網が一閃し、捕獲に成功した。見慣れた在来セミよりひと回りデカいので、成虫でも多少過食部も多いかも?「成虫の筋肉はちょびっとしかとれないけれど、旨味が強く単純な味の比較だと幼虫に引けを取らない」そう。でも嬉しくはあるけれど、せっかく来たんだから幼虫も欲しい!
捕食者が集う町、川口。
日が沈んだ後は、幼虫が羽化するために地面から這い出してくるので待ち構える朗。が、夜になるとこの竹林には巨大セミを捕食する野獣が出没するらしい…。幼虫を求めて足元を探す朗に、忍び寄る漆黒の獣。ネコチャンである。
早速羽化したてのセミを捕まえ、食べ始めるネコチャン。と、そこに我々とは別で昆虫採取に来ていたらしいオッサンが割り込んできて、ネコチャンからタケオオツクツクを取り上げる。返してやれよ!
そんなドタバタをよそに朗も幼虫を捕獲、無事に成虫・幼虫を1匹ずつゲットしたのだった。果たしてそのお味やいかに!?
調理編に続く。