原料はコーヒー、出来たのはコーラ。葉山発、“天然エナジードリンク”の秘密とは?

ディレクターズコラム


原料はコーヒー、出来たのはコーラ。葉山発、“天然エナジードリンク”の秘密とは?

葉山にあるカフェの新メニューはなんと「コーヒーから生まれたコーラ」。それは天然のポリフェノールたっぷりで、飲むと元気が出るような不思議なドリンクだった。偶然が重なった誕生の裏話と美味しさの秘密に迫る。


塩見 知花

福島生まれ福島育ち、地元の酒・米・果物をこよなく愛す。報道記者時代には東日本大震災と原発事故の復興関連取材に注力。趣味は登山、キャンプ、ビールを美味しく飲むための料理。


赤い果実のコーラ

みなさんは「コーヒーチェリー」を知っているだろうか。私たちが普段目にするコーヒー豆は、コーヒーの実の種子のことで、その種子は赤い果肉に覆われている。小さくて赤い果実は、見た目がサクランボに似ていることから「コーヒーチェリー」と呼ばれているのだが、神奈川県葉山町で、このコーヒーチェリーを使ったクラフトコーラが誕生した。

カフェテーロ葉山。長い間木々が取り囲んでいたため、改装工事に取り掛かるまで地元の人たちもこの民家の存在を知らなかったという。

開発したのは、コスタリカコーヒーを専門に扱う「カフェテーロ葉山」。築100年を超える古民家を改修したいわゆる古民家カフェだ。雨どいや縁側、床の間などの設えはそのままに、和と洋がちょうどよく融合し、モダンで落ち着く空間になっている。

オーナーは葉山に住んで15年になるという大下力さん。水産食品会社に新卒で入社後、チリやアメリカで駐在員を経験したが、現地の人々と仕事を共にする中で、中南米の文化にも興味を持つようになった。コスタリカとの出会いは、欧米を中心に注目が高まっていたコスタリカコーヒーを個人輸入したこと。駐在中に現地に行ったことはなかったが、その美味しさに驚き、すっかりファンになった。そしてコスタリカのことを調べていくうちに、軍隊を捨てた永世中立国であり、小国ながら環境・人権・平和の分野で世界をリードしていることを知り、コスタリカという国自体の虜になったのだそうだ。「1杯のコーヒーを通してコスタリカの魅力も伝えたい」と、5年前にこのカフェを開いた。

オーナーの大下力さん。コスタリカコーヒーのことを語り出したら止まらない。
店ののれんにはコスタリカに生息する鳥・ケツァールをデザイン。世界一美しい鳥と言われている。

建物の歴史や改修の工程のこと、そしてコスタリカコーヒーのことなど、聞きたい話は山ほどあるが、まずはそのコーラを飲んでみたい!ということで、早速シロップを製造している場所へと案内してもらった。

素材は贅沢に 手間暇かけて

コーラの仕込み作業が行われているのはカフェからほど近くにある食品加工場で、工場内はスパイスの香りで満ちていた。
大下さんのコーラの主な材料は、コーヒーの実の濃縮エキス・レモン(皮ごと美味しくいただける)・甜菜糖・スパイス(シナモン、カルダモン、クローブの3種で形や品質にもこだわっている)となっている。この、黒っぽくてどろっとしているのがコーヒーの実のエキスだ。

濃厚な甘味とほのかな酸味がある。
画像:Adobe Stock

コーヒーの実はそのほとんどが種子で、果肉は20%ほど。基本的に豆のみが商品化されるため、果肉部分はほとんど流通していない。しかし、コロンビアの会社が独自の技術で果汁を濃縮したエキスに加工。決して安価なものではないが、コーヒーチェリーコーラにはこれを惜しげもなくたっぷりと使う。エキス自体は、ほのかに酸味が加わった濃縮プルーンのような味。まずはこれを煮出したところにレモンとスパイスを入れる。数日かけて味わいを引き出した後、追加のレモンと甜菜糖を投入しじっくり加熱していく。作業は全て人の手で。手間暇をかけて仕込むことで、甘みと香りが凝縮された極上のシロップが出来上がるというわけだ。

炭酸で割ればそれはもう「コーラ」

このシロップを炭酸で割れば「コーラ」の完成(シロップを約7〜8倍に希釈するのがおすすめだそう)。
一口飲んでみると、スパイスの心地よい清涼感が口いっぱいに広がり、ふわっとした幸福感に包まれるような感覚!天然の素材だけで作っているので、普段飲んでいるコーラより甘さは控えめ。一般的に認知されているコーラよりも優しい味わいで疲れがほぐれ、気持ちもリフレッシュ。疲れている時に飲めば元気が出るような、そんな新しいタイプのエナジードリンクだった!

クラフトコーラは偶然に

そもそもこのコーヒーチェリーコーラはなぜ生まれたのか。そこにはいくつもの偶然と幸運が関係していた。

ある常連客との出会い

大下さんがコーヒーチェリーエキスと出会ったのは約1年半前。コスタリカの大使館関係者から紹介され、カフェのメニューに取り入れてみることにした。果汁エキスを蜂蜜と合わせ、それを炭酸で割って提供してみたところ「(普段飲んでいる)コーヒーとは全く違う美味しさが楽しめる!」と、瞬く間に人気メニューになった。
しかし、季節が進み肌寒くなった頃、今度はそれをお湯で割ってみたところ、何かが物足りなかった。ならば、スパイスを混ぜてホットワインのような味わいにすることはできないだろうか。悩む大下さんを救ったのが、カフェの常連客の一人であり、同じ葉山で養蜂や食品加工を手がける成田和正さんだった。なんと成田さんの工場はカフェから徒歩5分ほどのところにあるという。なんたる偶然と幸運なのだろうか。こうして2人の、コーヒーチェリーシロップ作りが始まった。

製造を担うechonica lab代表・成田和正さん。カフェに初めて来た時は大下さんがコスタリカやコーヒーの魅力を3時間近く語り、その熱量に驚いたそう。

試行錯誤の末、たどりついた「コーラ」という答え

スパイスの種類、量、加熱の時間など、試行錯誤は1年以上。時には店で提供し「もう少し甘くない方が好き」などといった客の意見も取り入れた。完成品を前に2人は「最高のものができた」と力を込める。
しかし、当初の狙いはホットワインのような飲み物を作ることだったはず…。実は、コーラとして提供するというのは後から出てきたアイデア。なぜコーラにしたかというと、「シロップを炭酸で割ってみたらコーラのような味だったから」とのこと。これまた偶然。結果「コーヒーでコーラ」というキャッチーさも加わり、カフェでの人気も上々だ。

カフェテーロ葉山では炭酸割りとお湯割りが通年で楽しめる。生姜をブレンドした「コーヒーチェリージンジャー」はまだ店舗限定。

このコーヒーチェリーコーラは高価なエキスをたっぷりと使っているだけでなく、スパイスの品質にもかなりこだわっているので、作るのにかなりコストがかかる。商品化にあたっては、「最高のものを作り上げるために妥協はしたくない」という思いの一方、高い壁が立ちはだかったという。
成田さんは「私は食品加工業をずっとやっているので、どうしてもコストを抑えて日持ちをさせるということを優先してしまうんですが、大下オーナーにコストを捨てていいかと聞いたら、いいよと言ってくれたんです。手間暇も素材コストもびっくりするくらいかかっているので、これが発売できたのは大下オーナーの心が広いからだと思います(笑)」と振り返る。
「コストよりも美味しさを」という決断は、世の中にコーヒーチェリーを広めたいというオーナー・大下さんの熱い思いの現れなのだ。

栄養たっぷりで実は地球にも優しい

ちなみに、コーヒーの果肉はポリフェノールやカリウムが豊富に含まれており、美容や健康に良い「スーパーフルーツ」と言われている。これが、コーヒーチェリーコーラを「天然エナジードリンク」と謳っている所以だ。ところがコーヒーの産地では、あくまでもメインはコーヒーの種子であり、果肉はそのほとんどが廃棄物として排水と一緒に捨てられており、これが環境汚染の原因にもなっているという。コーヒーチェリーを活用することは、世界の課題を解決する糸口にもなっているのだ。

楽しみ方は他にも

寒い季節はほっとするお湯割り

シロップをカップに入れ、5〜6倍の量のお湯を注ぐ。甘さの中にスパイスがふわっと香り、ホットワインのような味わいを楽しむことができる。お酒をちょっと垂らすと、体が温まる大人の味わいになりそう。

実はミルクとの相性も◎

ミルクと出会うとまた違った表情に。バニラアイスにちょっとかければ、スパイスの香りが引き立ちリッチな味わいに。牛乳と混ぜればチャイ風に楽しむこともできる。
瓶入りのシロップはカフェはもちろん、葉山町や逗子市のスーパーで販売されているほか、葉山町のふるさと納税の返礼品にもなっている。

どの味わい方も、甘さとスパイシーさが元気をくれる。一息つきたい時、リラックスしたい時、コーヒーチェリーでコーヒーブレイクはいかがだろうか?

希少なコーヒー果実から生まれる“天然エナジードリンク”で最幸の癒しを届けたい

❶湘南・葉山のコスタリカコーヒー専門店が独自レシピで生み出す希少なコーヒーチェリー使用の「天然エネジードリンク」
❷独特の爽やかな酸味とフルーティな甘味で「ほっと一息」にぴったりのドリンク
❸定番のコーヒーチェリーコーラに続く姉妹商品「コーヒーチェリージンジャー」が新登場!