宇宙レベルの断熱を謳う“ソーラーコア”を液化窒素などで実験してみた!

ディレクターズコラム


宇宙レベルの断熱を謳う“ソーラーコア”を液化窒素などで実験してみた!

宇宙服素材のパイオニア『OROS』の”ソーラーコア”は、NASAで使われているエアロゲル素材を世界で初めてアパレルウェアに応用した生地で、断熱性が特に優れているそうだ。果たしてその性能はどれほどのものなのか?検証してみることにした。


ウメダナツキ

岐阜生まれの映画好きディレクター。企画、撮影、編集、配信までワンストップで制作。
初めて劇場で見た映画は「ゴースト/ニューヨークの幻」。少年の私は字幕も読めないのに感涙した。


OROSの「ソーラーコア」とは

最先端テクノロジーのアパレルウェアで全米クラウドファンディング累計1億2000万円以上の支援金を集めたOROS。そのテクノロジーの根幹になっているのが「ソーラーコア」だ。
ソーラーコアは、個体の煙とも形容されるエアロゲルを特殊加工して作られた厚さたった2〜3ミリの生地で、OROS JAPAN公式サイトによると「この画期的な生地は、エアロゲルの比類なき断熱特性と特殊加工による柔軟性を組み合わせたもので、地球上で最も暖かく、かさばらないギアを生み出します」と記されている。
なるほど。疑い深い私は、徹底的に過酷な状況で生地の断熱性能を検証してみることにした。

検証:断熱生地はどれくらい過酷な環境に耐えられるか?

第1の実験 -196℃の液化窒素ガスを噴射

地上で観測された世界の最低気温の記録は-89.2℃で、1983年に南極大陸で測定された。液化窒素の温度は-196℃なので、噴射された液化窒素にソーラーコアが耐えることが出来れば宇宙レベルの断熱性能と認めても過言ではないだろう…という仮定をもとに第1の実験を行った。
実験方法は至ってシンプル。OROSのオリオンパーカーを着用したモデルに液化窒素ガスを30秒間噴射し続け、表面温度をサーモカメラで測定した。オリオンパーカーは、厚さ2〜3mmのソーラーコアが全身に搭載されており、アメリカの公式サイトでは「地球の果てまで探索しても、近所を探索しても快適に過ごせます」とされている代物だ。

結果は、ご覧の通り。

サーモカメラを見ると、液化窒素の噴射を受けたオリオンパーカーの表面は真っ青になっているが、脱いだ後の背中は黄色になっている。今回使用したサーモカメラは研究機関が使うような高性能のカメラではないため、背中の部分が何度になっているか正確には分からないが、真っ青になったオリオンパーカーと比べると断熱したと言えるのではないだろうか。
-196℃の低温でこの結果が出るなら、南極大陸のような-89.2℃の過酷な環境下に置かれたとしてもしっかりと断熱してくれることだろう。

第2の実験 熱々のフライパンに氷をのせる

氷が溶け出す温度は0℃から。フライパンに中火で熱せられれば瞬く間に水になるのは明白だ。しかし、ソーラーコアに乗せた氷はどうだろう?完全に断熱されれば氷は溶けずにそのままの姿を保っていられるかもしれない。使用するソーラーコアの厚さはたった3mm。そんな魔法のような断熱は可能なのだろうか…。
こちらの実験方法では、ガスコンロの火を“中火”に設定し1分30秒ほど熱し続けた。今回の実験に成功すれば、低温だけでなく高温の環境下でも断熱されることが証明される。

結果はご覧の通り。

ソーラーコアに乗った氷は、全く形状を変えず少しも溶けることがなかった。サーモカメラを見てもソーラーコアが断熱していることは明らかだ。断熱とは「周囲の熱を伝わりにくくする」ということで、断熱材を用いた住宅などは「夏は涼しく、冬は暖かい」などと表記されるが、これほどの高温でも断熱をするとは驚いた。

第3の実験 ドライアイスから素手を守れるか 

正直、今まで以上の方法で断熱を検証する手が思い浮かばないが、今回は−79℃のドライアイスを用いて検証を行った。手の平に乗せたソーラーコア3mmの上にドライアイスを5分間置き、サーモカメラで測定するというものだ。断熱されるのは間違いないだろうが、今回は超低温の固形物が隣接している。一体どれほど影響受けずにいられるのだろうか。



結果は、ご覧の通り。

小指の付け根の辺りが若干青くなっているが、ほとんど影響を受けなかったとみて良いのではないだろうか。ちなみにこの手の平の主は私で、感覚的には少しひんやりしたぐらいの感触だ。実験は5分だったが「ずっとドライアイスを持っていられる」と思えるほど変化を感じなかった。

結論

今回の結果を見る限りOROSのソーラーコアが搭載されたウェアを着れば、どんな極寒の場所でも快適に過ごせそうだ。厚さは最大で3mm。ダウンジャケットよりも圧倒的に薄く、見た目がダボっとした印象にならない。99%が空気のエアロゲルがもとになってることもあって軽さも抜群だ。予算さえあればソーラーコアが搭載されたアウターを着て南極大陸で検証してみたいものだ。

番外編 春〜初冬用モデル ITINERANTジャケット

OROSの新製品ITINERANTジャケットは、究極の断熱性能を謳う製品ではない。しかし、胸部と背部にソーラーコア2mmが搭載されており、世間で売られている大抵のジャケットより断熱性が優れているのは容易に想像出来る代物だ。
しかし、実際に検証してみないと断言は出来ないということで、こちらの製品も検証してみることにした。

ドライアイス VS ITINERANTジャケット

ソーラーコア3mmで行われたドライアイス実験での断熱性能は分かったが、ソーラーコア2mmのITINERANTジャケットでは果たしてどうだろうか。今回はソーラーコアが搭載されたジャケットの上に直接ドライアイスを乗せて検証してみることにした。

結果は、ご覧の通り。

ITINERANTジャケットを介して3分間ドライアイスを乗せた手のひらは、断熱されてほとんど影響を受けることはなかった。改めて言うがドライアイスの温度は-79℃である。2mmのソーラーコアでも十分に断熱性能があることは明らかだろう。

ちなみに「世界で一番寒い村」として知られるロシア・サハ共和国の村オイミャコンの最低気温の記録は約−70℃だ。

熱中対策 タオルに氷をつくるスプレー VS  ITINERANTジャケット

検証方法の手段に頭を悩ましてたところ、小林製薬から優れものの冷却アイテムがあることを知った。こちらの冷却スプレーはなんと瞬間的に−30℃に達し氷を作ってしまう。もはや−30℃を断熱しても驚きがなく結果は目に見えているが論より証拠ということで実験してみることにした。

結果は、ご覧の通り。

ドライアイスに耐えられれば氷に耐えられるのは当たり前で、結果は予想通りだった。

DWR撥水加工

ITINERANTジャケットは登山メーカーのレインウェアでも使用されるDWR撥水加工が生地に施されており、断熱性能だけでなく撥水性にも優れているという。撥水性とは水を弾く性質のことを言うが、どの程度弾くのかこちらも検証してみることにした。


結果は、ご覧の通り。

レインウェア製品にも施されているというだけあって、生地の表面を水滴が滑っていき全く浸透していないことが分かる。アクティブシーンの使用も想定されたITINERANTジャケットは、急な雨などにも対応し最新テクノロジーの効果を遺憾なく発揮してくれそうだ。

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