技術で手渡す文化のバトン 歴史の価値を継ぐ古木家具

熱狂と酔狂 ディレクターズコラム


技術で手渡す文化のバトン 歴史の価値を継ぐ古木家具

500年を生きた木材が梁へと姿を変え、200年建物を支えたなら、見てきた時間は700年。人の暮らしを長らく見守ってきた木材も受け継ぐ人がいなければゴミとして燃やされてしまう、その価値を見出して今後の100年に生かす会社が長野にあります。


酒井 純信

社会の檻の錠前破りにしてひとり働きの動画屋。死んだ魚の目なんて比喩がありますが目をキラキラさせ生きるおっさんも同時代にいる。その生き様を動画で綴りインターネットに流しますので、檻から抜け出す鍵を見つけてください。


“魂が宿る”古木の家具

長野市と大町市に拠点を構える山翠舎は、古民家解体で出た“古木”の材を活かした家具作りに挑んでいる。それはかつて地域一番の棟梁が技を尽くした地域一番の木材たち。年月を経た表情に日々向き合う木工作家の海川さん(古木のベンチ制作を担当)曰わく、「物には魂が宿る。」大人二人でも抱えきれないような大きな柱も保管される倉庫は、古木たちの気配の圧を感じる、圧巻の空間。

この気配は一体なんなのだろう?と思うとともに、これらの材に負けないほどの材、つまり時代や暮らしを見つめてきた古木や、古民家が、どんどん壊され燃やされている、という現実も想起させられる。山翠舎が本当に目指したいのは古民家解体ゼロ。古民家の保存や古木を活用した空間の提案を事業として進めつつ、新しく古民家の骨格である古木の魅力を知ってもらうための古木家具の制作をはじめた。

当時の仕上げと場所と時間経過による仕上げが刻まれる
立派な古木は神様みたいな存在感だった

材と共に失われゆく技術

無垢材、ましてや国産の樹齢200年以上でとなれば現在は寺社用材が多く、個人宅でとなると滅多に使われなくなり、そもそも伝統工法で家を建てるのは一部の趣味人だけになりつつある。建築様式が変わってしまった現在では、無垢材を刻む機会がぐんと減り、修行の機会もあまりないけれど、山翠舎は古民家保存を事業の主幹に据えているため、若手が伝統工法に触れるチャンスも多い。中島棟梁から図面なしで家を建てていた時代の技を受け継ぎつつ、現代にも通用する空間を提案できる組織として、時代に合わせた古民家と古木の活用法を発信している。

古木も、棟梁が見てきた時代と技も、引き継ぐ

手で刻んだ石と古木

古木のベンチに使われている石材は信州高遠の産地で石工が刻み、運び出した物だろうという。蔵の敷石として使われていた石材に、梁材だった太い古木を据えて作ったベンチは深い森と信州の山の記憶を纏い、現代の空間に滲ませながらこれからの100年を生きる。樹齢500年の木を、材に変え300年で解体したならせめてもう200年、樹齢分の500年を生かせないか?その先の価値創造に挑むため、目の前にある価値を継ぐ試みのひとつが古木の家具だ。

釿(ちょうな)を打ち付けた表面仕上げ

時代をお迎えする

地域の山のシンボルだっただろう巨木が、地域一番の権力者の家に運ばれ、地域一番の大工の技で加工された。丸い木肌を釿(ちょうな)で鱗状に削り出した跡や、長い年月を過ごし深い飴色になった表情、そして樹齢からくる圧倒的な質量に驚かされる体験。古木がひしめく山翠舎の大町倉庫にの中に、あなたの建物の守り神になるような材との出会いがあるかもしれない。