ふくしま「おいSeaFood」
とろける食感がやみつきに!いわき市民が愛するメヒカリ
メヒカリは、常磐ものの中でも特に地元民から愛されている魚だ。およそ15㎝の小さな深海魚で、標準和名は「アオメエソ」。目が大きく眼球が青く光って見えるため、「メヒカリ」と呼ばれている。
福島の豊かな海で育ったメヒカリは、脂乗りがよく皮が薄い。唐揚げや干物、刺身で食べられることが多く、常磐ものを代表する魚の一種だ。いわき市の特産品であり、2001年には“市の魚”にも制定されている。
いわき市内の飲食店で、メヒカリを扱うところは多い。中でも泉駅前の『酒縁てる』では、“お茶漬け”をはじめ様々なメヒカリ料理を楽しむことができる。いわきの鮮魚と地酒にこだわり、メヒカリの魅力を熟知する店主の箱崎義典さんに話を聞いた。[Presented by 水産庁]
揚げ・焼き・刺身・お茶漬け……多様なメヒカリ調理法
義典さんいわく、メヒカリは「小さいときからずっと食べていた」馴染みの存在。子ども頃は丸干し(開きにせず、そのままの姿で干物にしたもの)で食べることが多かったそう。鮮魚店の干場で、竹串に刺されたメヒカリが干されている光景をよく覚えているという。当時は「メヒカリ1串買って来て!」とおつかいに出されることも多かった。
いわき市民にとって、メヒカリは普段から口にすることが多い魚。日常的に食べるからこそ「食べ方にうるさい人もいますよ」と義典さん。それぞれに好みの食べ方があるようだ。
メヒカリは淡白で食べやすく、骨もあまり固くない。そのため、唐揚げにすれば子どもでも丸ごと食べられる。調理方法もシンプルで簡単なため、家庭では唐揚げにされることが多い。ビールのつまみにもぴったりだ。
義典さんの一押しは、開きの一夜干し。鮮魚店や飲食店がそれぞれの調理法で作っているため、店により味が微妙に異なる。「干物は奥が深いんです。いろんな店の干物を食べて、自分に合うものを探すと楽しいですよ」と義典さん。お店によって、塩分濃度や干す時間にこだわりがあるのだそう。
もちろん、『酒縁てる』の干物も自家製だ。メヒカリは深海に住んでいるため、エラ付近に土が残っていることがある。処理は手間をかけ、丁寧に行うという。じっくりと焼いた一夜干しは、塩気と脂のバランスがよく、凝縮された旨みが口に広がる。
ここ20~30年ほどで食べられるようになったのが、“刺身”。メヒカリは足がはやいため、刺身にできるのは水揚げから2日が限度。この食べ方を楽しめるのは、水揚げ産地だからこそ。とろけるような柔らかな食感と、口の中に甘みが長く残るのが印象的だ。
そして、『酒縁てる』の看板メニューが「酒縁てる めひかり茶漬け®」。独自に開発した調理法で、「この食べ方を世の中に広めたい」と商標権も取得した。〆に注文する人が多いが、人気のためよく売り切れてしまうそう。
メヒカリをお茶漬けで食べられる店は、そう多くない。なぜお茶漬けにしたのかを尋ねると、「小さい頃から魚のお茶漬けを食べていたから」とのこと。本当は別の魚をお茶漬けにしようと思っていたが、試しにメヒカリで作ってみたら「美味しかった」。
お茶漬けに乗っているのは、天日干ししたメヒカリを炙ったもの。なんと、お茶漬け専用に塩加減や干す時間を調整しているそう。「通常の一夜干しの開きとは味が違います。かなりこだわっていますよ!」と自信を見せる。
常磐ものの魚を福島の地酒とともにおもてなし
『酒縁てる』のこだわりは、魚だけではない。地酒にこだわっており、日本酒は常時20種以上そろえている。酒蔵に足を運び人間関係を築くことで、希少な銘柄も仕入れることができているそう。
メヒカリは「美味しいし、誰にでも馴染みやすい」魚だ。焼き・揚げ・刺身、そしてお茶漬けなど、様々な調理法がある。また、各店が趣向を凝らしたメニューを提供している。
『酒縁てる』でも、「メヒカリを推しています。みなさん“美味しい”と食べてくれますよ」とのこと。首都圏のスーパーではめったに見ることができないため、まだまだ“知る人ぞ知る”存在のメヒカリ。いわき住民が自信を持って推す魚を、是非試してみてほしい。