ディレクターズコラム
『土に還る服』を謳うサステナブルブランドの生地を1か月土に埋めた結果…
サステナブル ジャパン スタイル を提案するWACRAは『全ては地球から⽣まれ、全ては地球に還る』をコンセプトに『土に還る服』を展開している。果たして本当に土に還るのか?検証結果をここに記載する。
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WACRAと衣服ロス問題
モノトーンのシンプルなデザインの衣服を手がけているブランドのWACRAは「全ては地球から⽣まれ、全ては地球に還る」をコンセプトに掲げ、100%土に還る服を作っているのだという。
WACRAがこういった取り組みをする背景には、ファッション業界の「衣服ロス」の問題があるからだ。
衣類のゴミは毎日トラック130台分
日本では年間約50万トンの衣料品が家庭からゴミに出されていると推計されていて、その9割以上が焼却・埋め立て処分されている。(環境省「令和2年度ファッションと環境に関する調査業務-『ファッションと環境』調査結果-」より)これは、毎日大型トラック130台分が処分されている計算らしい。
衣服の原料となるポリエステルやナイロン、アクリルといった主要な化学繊維はプラスチック由来のもので、燃やすと有害物質がでたり、生分解性でないものが多いため、埋め立てても分解が進みにくい。
こうした環境負荷の問題から、リサイクル・リユースを進めるという家庭での意識も高まっているが、ファッションブランドでもリサイクル素材の活用や天然素材の利用を進めるケースがかなり増えている。
WACRAの服には、オリジナルの「和紙綿」という生地が使用されている。どちらも天然素材由来である「和紙」と「綿」をブレンドした生地で、原料のコットンも「3年以上農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で栽培されているもの」「栽培する人たちの安全や労働環境を守って製造されたもの」などこだわりを持って選んでいる。
検証:布は本当に土に還るのか?
「100%土に還る服」を謳うWACRAの生地は、本当に土に還るのか?布を実際に土に埋めて検証しながら、その経過を撮影してみた。
準備 〜最適な土と記録方法〜
実験に用意したのは、主に以下のものだ。
・培養土 25L 1,099円
・カルスNC-R 1,730円
・米ぬか 1,000円
この3つは全てネットで購入可能で、微生物の活動が活発になる環境を考えて用意した。
土に還る様子を記録するため、タイムラプス機能を用いて5分に1回写真も撮影する。想定する撮影期間は2週間だ。
5月19日曇りのち雨/検証スタート
自宅の窓際にスペースを設けて検証がスタートした。WACRAが使用している和紙綿をTシャツ型にカットした生地を土に乗せて、下半分は土中に埋めた。記録撮影に使うカメラは、無限設定されたタイマー付きレリーズリモコンで5分に1回シャッターが切れる仕組みとなっている。
5月21日晴れ/白カビ出現
検証3日目。この日は朝から強い日差しが部屋に差し込み、気温は25℃を越えて夏日となった。出先から帰ってきて様子を見ると、和紙生地の周りにうっすらと白カビが出現。この白カビは「糸状菌」と呼ばれ微生物が活性化して分解が始まった証だ。
5月26日曇り/生地を取り出してみる
検証開始から1週間。土の上に乗った部分の生地は茶色に変色したぐらいでほとんど変化がなかったが、土に埋まった部分を取り出すと、小さな穴があいていた。しかし、全体的には『土に還る服』と言えるほどの分解はまだ進んでいない。
5月31日曇り/緑が生えた
13日目。小さな草が生えていることが確認された。しかし、土の上の生地に大きな変化が見られないため検証期間を2週間延長することにした。
6月9日曇り
検証開始から3週間が経った。よく見れば穴があいたり生地の端が朽ちていたりするものの、緑の急成長に目を奪われてほとんど変化がないようにも見える。
6月18日曇り時々晴れ/検証最終日
検証を始めてから1か月が経った。スコップで土を掘り返すと生地がどこにも見当たらず微生物が完全に分解してしまったことに気づいた。土の上の生地も、触ればボロボロと砕けて分解が進行している。
検証結果と考察
検証の結果『土に還る服』は本当だった。当初は専用の土を用意したこともあり2週間で目に見える変化を期待していたが、結果的に1か月かかった。土に埋まった生地の変化は驚くほど明白で、跡形もなく分解されてしまった。
石油由来の化学繊維は分解に何百年もかかると言われている。そもそも化学繊維は産業革命以降に開発が始まり、第二次世界大戦後にアメリカからナイロンのストッキングが輸入された頃から日本に広まった。それ以前は天然繊維を着るのが当たり前だったが、現在では天然繊維でできた服の方が珍しくなってしまっている。
『土に還る服』。それは本来とても普通のことで人類史からすれば驚くべきことでも何でもない。しかし、衣料ロスの現状は『土に還る服』という本来普通だったことが斬新に聞こえるほど、問題が根深くなっているということなのかもしれない。
撮影期間
5月19日〜6月18日
撮影枚数
8608枚
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